熱収縮チューブの使い方と基礎知識

熱を加えることで収縮する熱収縮チューブは、電子部品や電線類の保護、絶縁、防水、防腐など様々な場面で使用されています。その用途は身近なものから産業・工業用部品まで多種多様であり、内径や素材など、使用環境に合わせて適切な種類を選定する必要があります。熱収縮チューブの基礎知識に加え、使用する上での注意点や選定方法など、実用的な部分に至るまで詳しく解説します。

熱収縮チューブとは

熱収縮チューブとは、加熱することで径が収縮するチューブのことです。電線などの目的物に通してから、熱を加えることで収縮・密着し、目的箇所を保護する仕組みです。

絶縁、防水、防腐といった数多くの効果が期待できる上、使用方法も単純で、特殊な技術は必要ありません。そのため、電子部品などの製造現場では不可欠であり、少量生産やトラブル時の現場補修などにも適しています。

なお、代表的な熱収縮チューブとしては住友電気工業社製の商標である「スミチューブ®」という名前で呼ばれる場合もあります。

熱収縮チューブの使用方法

熱収縮チューブは内径の違いなど様々な種類があり、目的物に合わせて長さをカットして使用します。カットしたチューブを被せ、熱を加えることで収縮し目的物を保護します。

このように使用方法は非常に簡単ですが、チューブの選定など使用において注意すべき点もいくつかあります。

使用時の注意点

チューブ内径の確認

熱収縮チューブを使用する際は、収縮前と収縮後のチューブ内径を確認する必要があります。収縮前は内径が目的物よりも大きく、収縮後は内径が目的物よりも小さくなるものを選定します。このとき、収縮後の内径には特に注意が必要であり、収縮後の内径が目的物よりも大きいものを使用してしまうと、収縮後に隙間が生じてしまいます。

チューブカット時の注意

熱収縮チューブは目的物に合わせ、適当な長さにカットして使用します。切断面に傷があると収縮時にその部分から裂けてしまう恐れがあるため、カットする際には傷がつかないよう注意が必要です。同じ箇所の切断には何度もハサミは入れず、一度に切り終えることがポイントです。

保管時の注意

直射日光や高温多湿の環境下ではチューブが収縮・変形してしまう可能性があるため、50℃以下の冷暗所で保管する必要があります。また、暖房器具などが近くにないか確認することも重要です。

収縮の方法

熱収縮チューブの収縮方法は、「チューブに熱を加える」という非常にシンプルな方法です。加熱する方法にはいくつか種類がありますが、大別するとヒートガンを使用する方法と、オーブンやガストーチを使用する方法の2種類に分けられます。

ここではそれぞれの方法について解説していきます。

ヒートガン

熱収縮チューブの収縮作業に使用される工具の中で、最も一般的なものがヒートガンです。

熱風を吹き付けることで、広範囲を効率的に収縮させることが可能です。次項で解説するオーブンやガストーチと比較すると、安全性が高く管理も容易なため、熱収縮チューブを使用するほとんどの現場で用いられています。

しかし、熱風の温度は500℃前後と高温になるため、火傷はもちろん、チューブ周辺の部品や配線が焦げないよう注意が必要です。熱が1点に集中しないように、ヒートガンを上下左右にかるく動かしながら、角度を変えて吹き付けていきます。

また、吹き付ける場所によっては、ヒートガン先端にあらゆる形状のノズルを取り付けることで、より効率的に収縮作業を行うことができます。

オーブンやガストーチ

チューブを直接火で炙り、収縮させる方法です。加熱温度が高く、一度に大量のチューブを収縮させることが可能です。高価ではないため、導入に対するハードルはそれほど高くありませんが、チューブやその周辺の部品・配線などが燃えてしまう危険性があります。

加熱方法や温度調節など、安定して作業を行うためには熟練された技術が必要となるため、一般的にはヒートガンによる方法がおすすめです。

収縮の原理

熱収縮チューブの素材には、各種エラストマー、フッ素ポリマー、フッ素ゴム、シリコンゴムなどが使用されています。これらの素材は、高エネルギー放射線を照射することで放射線架橋(ほうしゃせんかきょう)と呼ばれる化学反応を引き起こし、その後加熱することによって均一に伸びます。こうして製造されたチューブは、再度熱を加えると収縮し、架橋反応を起こした際の大きさに戻ります。

以上が収縮の原理であり、この原理を利用して熱収縮チューブは作られています。

熱収縮チューブの使用用途

熱収縮チューブは身近な電子機器や家電はもちろん、自動車や航空機のワイヤーハーネスなどにも使用されています。また、医療分野への利用も広がっており、手術装置や外科用器具のシャフトなどにも使われています。

熱収縮チューブは単純に部品や電線を結束するだけではなく、防水、防腐、絶縁といった様々な効果を付加することができます。さらに、引っ張りや折り曲げなどの衝撃から保護する役割も果たすため、製品の寿命を伸ばす上で欠かせない存在といえます。